不動産営業は本当にきついのか?【結論:業態による】
「不動産営業はきつい」とよく言われます。実際、不動産業界の離職率は他業界と比べても高い傾向にあり、入社3年以内の離職率は40%を超えるという調査結果もあります。
しかし、「きつさ」は業態や会社によって大きく異なります。この記事では、不動産営業経験8年の筆者が、業態別のきつさの違いと、その対処法を詳しく解説します。
【業態別】不動産営業のきつさ比較表
まず、業態別のきつさを比較してみましょう。
| 業態 | ノルマ | 労働時間 | 収入安定性 | 精神的負担 | 総合評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売買仲介(個人向け) | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | 最もきつい |
| 投資用不動産営業 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | 最もきつい |
| 賃貸仲介 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | 普通 |
| 法人向け仲介 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | やや きつい |
| 不動産管理 | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | 比較的楽 |
| デベロッパー営業 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | 普通 |
不動産営業がきつい7つの理由【詳細解説】
理由1:ノルマのプレッシャー(きつさ度:★★★★★)
不動産営業最大のストレス要因がノルマです。
業態別のノルマ目安:
| 業態 | 月間ノルマ目安 | 達成難易度 |
|---|---|---|
| 売買仲介(実需) | 1〜2件成約 | 高い |
| 売買仲介(収益) | 売上500〜1000万円 | 非常に高い |
| 投資用不動産 | 売上1000〜2000万円 | 非常に高い |
| 賃貸仲介 | 10〜20件成約 | 普通 |
| 法人向け仲介 | 売上300〜500万円 | やや高い |
ノルマ未達成時のペナルティ例:
- 上司からの厳しい叱責・詰め
- ボーナスカット
- 昇給・昇格の見送り
- 担当エリアの変更
- 最悪の場合、退職勧奨
経験者の声:
「月末になると胃が痛くなる。達成できないと翌月まで引きずる精神状態になった」(32歳・売買仲介)
「数字を追いかける毎日。達成しても翌月にはリセット。終わりのないマラソンを走っている気分」(28歳・投資用不動産)
理由2:長時間労働(きつさ度:★★★★☆)
お客様の都合に合わせるため、夜遅くまでの案内や土日出勤は当たり前。ワークライフバランスを保つのは難しい仕事です。
不動産営業の平均労働時間:
| 項目 | 平均値 | 繁忙期 |
|---|---|---|
| 1日の労働時間 | 10〜12時間 | 14時間以上 |
| 月間残業時間 | 40〜60時間 | 80時間以上 |
| 月間休日数 | 6〜8日 | 4〜6日 |
長時間労働の具体例:
朝9時出社 → 物件調査・資料作成 → 13時〜お客様案内(2〜3件) → 18時帰社 → 事務作業・顧客フォロー → 21時〜22時退社
契約前は23時過ぎまで残ることも珍しくありません。
業態別の労働時間傾向:
- 売買仲介:契約前は深夜まで。繁忙期(1〜3月)は休みなし状態
- 投資用不動産:夜間のテレアポが多い。21時以降の電話も普通
- 賃貸仲介:比較的定時退社しやすいが、繁忙期は長時間化
- 法人向け:比較的労働時間は安定。土日休みの会社も多い
理由3:休日が取りづらい・平日休み(きつさ度:★★★★☆)
不動産営業は土日が稼ぎ時。平日休みが基本で、友人や家族との予定が合わないことがストレスになります。
休日が取りづらい理由:
経験者の声:
「友人の結婚式に出席できなかったことが何度もある。土日休みの友人とは疎遠になった」(30歳・売買仲介)
「子どもの運動会に一度も行けなかった。家族との時間が取れないのが一番つらい」(35歳・投資用不動産)
理由4:収入の不安定さ(きつさ度:★★★★☆)
歩合制の割合が高い会社では、契約が取れないと収入が大幅に下がります。
収入変動の具体例(売買仲介・年収目標600万円の場合):
| 月 | 成約件数 | 月収 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 2件 | 85万円 | 固定25万円+歩合60万円 |
| 5月 | 1件 | 55万円 | 固定25万円+歩合30万円 |
| 6月 | 0件 | 25万円 | 固定25万円のみ |
| 7月 | 0件 | 25万円 | 固定25万円のみ |
| 8月 | 3件 | 115万円 | 固定25万円+歩合90万円 |
このように、月によって90万円も収入差が出ることがあります。
収入不安定のリスク:
- 住宅ローンの審査に通りにくい
- 将来の計画が立てにくい
- 精神的なプレッシャーが大きい
- 貯金がしにくい
理由5:クレーム対応の精神的負担(きつさ度:★★★★☆)
高額商品を扱うため、クレームの内容も深刻なものが多いです。
よくあるクレーム例:
| クレーム内容 | 頻度 | 対応難易度 |
|---|---|---|
| 契約後の物件瑕疵 | 月1〜2件 | 非常に高い |
| 説明不足の指摘 | 週1〜2件 | 高い |
| 近隣トラブル | 月1〜2件 | 高い |
| 価格への不満 | 週2〜3件 | 普通 |
| 対応の遅さ | 週1〜2件 | 普通 |
クレーム対応の精神的負担:
- 数百万〜数千万円単位の損害賠償リスク
- 土日関係なく連絡が来る
- 解決まで数ヶ月かかることも
- 裁判に発展するケースもある
経験者の声:
「引き渡し後に雨漏りが発覚。売主との板挟みになり、3ヶ月間毎日胃が痛かった」(29歳・売買仲介)
理由6:常に数字を追われる環境(きつさ度:★★★★☆)
売上、案内件数、成約率など、常に数字で評価される環境は精神的に消耗します。
追いかけられる数字の例:
- 月間売上(ノルマ)
- 成約件数
- 案内件数
- 反響対応数
- 媒介取得数
- 成約率
- 顧客単価
数字管理の実態:
- 毎朝の朝礼で進捗報告
- 週次での数字レビュー
- 月末のノルマ追い込み
- ランキング掲示による可視化
- 未達成時の報告会議
理由7:体力的な負担(きつさ度:★★★☆☆)
物件案内での移動、重い資料の持ち運び、立ちっぱなしの接客など、体力的にもハードです。
体力的に負担がかかる業務:
- 1日3〜5件の物件案内(移動含む)
- 重い契約書類・販促資料の持ち運び
- 立ちっぱなしでの内見対応
- 真夏・真冬の外回り
- 車の長時間運転
業態別の体力負担:
- 売買仲介:物件案内の移動が多い。1日50km以上運転することも
- 投資用不動産:テレアポ中心だが、飛び込み営業がある会社も
- 賃貸仲介:案内件数が多い。繁忙期は1日10件以上案内も
- 法人向け:比較的体力負担は少ない
不動産営業のきつさを乗り越える7つのコツ
コツ1:数字に一喜一憂しない
長期的な視点で考え、一時的な不調に落ち込みすぎないことが大切です。
実践方法:
- 月単位ではなく、四半期・年単位で数字を見る
- 契約0件の月があっても、年間目標を達成していればOKと考える
- 成約までのプロセス(案内数、媒介取得数)も評価指標にする
コツ2:効率化を徹底する
無駄な作業を減らし、成約につながる活動に集中しましょう。
効率化のポイント:
- 見込み客の優先順位付けを徹底する
- 成約確度の低い案内は断る勇気を持つ
- ITツール(CRM、電子契約など)を活用する
- 移動時間を最小化するルート設計
コツ3:相談できる環境を作る
同僚や上司、社外の人など、相談できる相手を作っておくことが大切です。
相談相手の作り方:
- 同期との定期的な情報交換
- 信頼できる先輩との関係構築
- 業界の勉強会・交流会への参加
- SNSでの不動産営業コミュニティ参加
コツ4:オン・オフの切り替えを意識する
仕事とプライベートの境界線を明確にしましょう。
切り替えのコツ:
- 休日は仕事用スマホの通知をオフにする
- 趣味の時間を確保する
- 運動習慣を作る
- 睡眠時間を確保する(最低6時間)
コツ5:スキルアップに投資する
スキルが上がれば、効率も上がり、きつさが軽減されます。
おすすめのスキルアップ:
- 宅建士資格の取得
- FP資格の取得
- 営業スキル研修への参加
- 業界知識の継続的な学習
コツ6:健康管理を最優先にする
心身の健康を損なっては元も子もありません。
健康管理のポイント:
- 定期的な健康診断の受診
- ストレスサインの早期発見
- 睡眠・食事・運動のバランス
- 必要であればカウンセリングを受ける
コツ7:転職という選択肢を持っておく
「いつでも辞められる」という選択肢を持っておくことで、精神的な余裕が生まれます。
転職準備のポイント:
- 転職サイトに登録しておく
- 自分の市場価値を定期的に確認する
- 貯金を確保しておく
- 転職エージェントと関係を作っておく
それでもきついなら転職も選択肢
努力しても改善しない、心身の健康を損なっているなら、転職を検討すべきです。
転職を検討すべきサイン:
- 3ヶ月以上、慢性的な睡眠不足が続いている
- 休日も仕事のことが頭から離れない
- 体重の急激な増減がある
- 趣味や友人との時間を楽しめなくなった
- 「消えたい」「逃げたい」と思うことがある
不動産営業の経験は他業界でも高く評価されます。無理に続けるよりも、新しい環境で活躍する道を選ぶのも賢明な判断です。
まとめ:きつさの原因を特定し、対処法を見つけよう
不動産営業がきついのは事実ですが、その「きつさ」は人によって、また業態や会社によって異なります。
この記事のポイント:
大切なのは、「なぜきついのか」を明確にし、適切な対処法を見つけることです。一人で抱え込まず、周囲に相談しながら、自分に合った働き方を見つけてください。