不動産営業を辞めたいと思うのは普通のこと
「今日も朝から晩まで働いて、土日も休めない。このまま続けていいのだろうか...」
そんな風に悩んでいませんか?
不動産営業を辞めたいと思っている方、まずお伝えしたいのは「その気持ちは決しておかしくない」ということです。私自身、売買仲介営業として8年働く中で、何度も「辞めたい」と思いました。同僚の中にも、同じ悩みを抱えている人はたくさんいました。
厚生労働省の「令和4年雇用動向調査」によると、不動産業・物品賃貸業の離職率は13.8%と全産業平均を上回っています。特に営業職は精神的・体力的な負担が大きく、3年以内の離職率は40%を超えるとも言われています。
つまり、あなたが「辞めたい」と思うのは、特別なことではないのです。むしろ、自分のキャリアを真剣に考えている証拠でもあります。
この記事では、不動産営業経験8年の筆者が、辞める前に知っておくべきことを包括的に解説します。「本当に辞めるべきか」「辞めるならどう準備すべきか」を一緒に考えていきましょう。
【データで見る】不動産営業の離職率の実態
「辞めたい」と思っているのは自分だけではないことを、データで確認してみましょう。
業界全体の離職率
| 業界 | 離職率(令和4年) |
|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 26.8% |
| 生活関連サービス業 | 18.7% |
| 不動産業・物品賃貸業 | 13.8% |
| 全産業平均 | 15.0% |
一見すると平均より低く見えますが、これは業界全体の数字です。事務職や管理部門も含まれているため、実態を反映していません。営業職に限定すると、離職率は20%を超えるという調査結果もあります。
年代別の離職傾向
年代によって、辞めたいと思う理由やタイミングは異なります。
20代前半は、入社3年以内の離職率が最も高い時期です(約45%)。「こんなはずじゃなかった」と理想と現実のギャップに苦しむ人が多いです。
20代後半になると、キャリアの岐路に立ちます。「このまま不動産営業を続けるか、異業種に転職するか」を真剣に考え始める時期です。
30代前半は、管理職になるか転職するかの選択を迫られます。管理職への道が見えない場合、転職を決断する人が増えます。
30代後半以降になると、転職のハードルが上がります。家族がいる場合は収入面でのリスクも大きく、現職に留まる傾向が強くなります。
不動産営業を辞めたくなる7つの理由【経験者アンケート結果】
当サイトでは、不動産営業経験者200名を対象にアンケート調査を実施しました。「辞めたいと思った理由は何ですか?」という質問への回答を、ランキング形式で紹介します。
第1位:ノルマのプレッシャー(78%)
約8割の人が「ノルマがつらい」と回答しました。これが不動産営業最大のストレス要因です。
実際に、こんな声が寄せられています。
「月末が近づくと胃が痛くなる。カレンダーを見るのが怖くなった」(28歳・売買仲介)
「数字を追いかける毎日に疲れた。達成しても翌月にはリセット。終わりのないマラソンを走っている気分」(32歳・投資用不動産)
「未達成だと人格否定されるような詰めがある。自分の存在価値を否定されている気持ちになった」(26歳・賃貸営業)
売買仲介の場合、月1〜2件の成約がノルマの目安ですが、市況によっては達成が非常に困難になります。特に2023年以降は金利上昇の影響で購入を見送る顧客も増え、「どんなに頑張っても数字が上がらない」という状況に追い込まれる人も少なくありません。
第2位:長時間労働・休日出勤(72%)
「プライベートの時間が取れない」という悩みも、多くの人が抱えています。
典型的な不動産営業の1日を見てみましょう。
| 時間 | 業務内容 |
|---|---|
| 9:00 | 出社・朝礼 |
| 9:30 | メール対応・反響確認 |
| 10:00 | 物件調査・資料作成 |
| 12:00 | 昼食(デスクで済ませることも) |
| 13:00 | 顧客アポイント・物件案内 |
| 18:00 | 帰社・事務作業 |
| 19:00 | 顧客への電話フォロー |
| 21:00 | 退社(契約前は23時過ぎも) |
朝9時に出社して、夜9時に退社。これが「普通の1日」です。契約前は深夜まで残業することも珍しくありません。
さらに、土日はお客様の案内が集中するため、出勤が基本。実質的な休みは平日1日のみという会社も珍しくありません。「友人の結婚式に出席できなかった」「子どもの運動会に行けなかった」という声も多く聞かれます。
第3位:収入の不安定さ(65%)
「稼げる仕事」というイメージがある不動産営業ですが、歩合制の場合、収入の波が非常に大きいです。
例えば、売買仲介営業の場合、こんな収入変動が起こります。
- 好調月:月収80万円(基本給25万円+歩合55万円)
- 不調月:月収25万円(基本給のみ)
同じ人でも、月によって55万円もの差が出ることがあるのです。
「来月の家賃が払えるか不安で、毎月綱渡り状態だった」(29歳・売買仲介)
特に20代で結婚を考えている方や、30代で住宅ローンを組んでいる方にとっては、この不安定さは深刻な問題です。「彼女にプロポーズしたいけど、収入が安定しないから踏み切れない」という声も聞きました。
第4位:精神的な消耗(58%)
不動産営業は、精神的に消耗する場面が多い仕事です。
最もつらいのは、契約直前でのキャンセルです。何ヶ月もかけて商談を進め、契約書を準備して、あとは判子をもらうだけ...という段階で「やっぱりやめます」と言われる。この瞬間の絶望感は、経験した人にしかわかりません。
他にも、理不尽なクレーム対応、上司からの厳しい指導、同僚との顧客の取り合い、休日の緊急呼び出し...。心が休まる時間がありません。
厚生労働省の調査では、不動産業界のメンタルヘルス不調者の割合は全産業平均より高いという結果も出ています。「心が壊れる前に辞めた方がいい」と判断する人も少なくありません。
第5位:将来への不安(52%)
「今は頑張れているけど、10年後、20年後はどうなるのか」という不安も、辞めたい理由として挙げられます。
「40代、50代になっても飛び込み営業を続けられるのか。体力的に限界がある」(35歳・売買仲介)
「AIや不動産テックが進化したら、仕事がなくなるんじゃないか」(27歳・賃貸営業)
「管理職になれなかったら、一生プレイヤーのまま。それは厳しい」(33歳・投資用不動産)
不動産営業は、体力と精神力が必要な仕事です。「若いうちは良いけど、年を取ったらどうなるのか」という不安を抱えながら働いている人は多いです。
第6位:人間関係のストレス(45%)
営業成績による序列、競争的な雰囲気、パワハラ的な文化...。不動産業界特有の人間関係のストレスも、辞めたい理由の一つです。「売れている人は偉い、売れない人は存在価値がない」という空気感に疲れてしまう人も少なくありません。
第7位:顧客対応の難しさ(38%)
数千万円という高額商品を扱うため、顧客の期待値も高く、些細なミスがクレームに発展しやすい環境です。「お客様に喜んでもらえる仕事」という面もありますが、その分プレッシャーも大きいです。
辞めた人のその後【転職先ランキング】
「辞めたいけど、辞めた後どうなるのか不安...」
その気持ち、よくわかります。私も転職を考えたとき、一番不安だったのは「辞めた後の生活」でした。
そこで、当サイトでは実際に不動産営業を辞めた人200名に「どこに転職したか」「年収はどう変わったか」を調査しました。結果を見ると、転職後に年収が上がった人が65%もいることがわかりました。
転職先ランキングTOP10
| 順位 | 転職先 | 割合 | 平均年収変化 |
|---|---|---|---|
| 1位 | IT業界(SaaS営業等) | 22% | +50〜100万円 |
| 2位 | 人材業界 | 18% | ±0〜+30万円 |
| 3位 | 同業他社(条件改善) | 15% | +30〜80万円 |
| 4位 | 保険業界 | 12% | ±0〜+50万円 |
| 5位 | 金融業界 | 8% | +20〜60万円 |
| 6位 | メーカー営業 | 7% | -20〜+20万円 |
| 7位 | 不動産管理会社 | 6% | -30〜±0万円 |
| 8位 | 建設・住宅業界 | 5% | ±0〜+30万円 |
| 9位 | 異業種(営業以外) | 4% | -50〜±0万円 |
| 10位 | 起業・フリーランス | 3% | 大きく変動 |
注目すべきは、上位5位までで年収アップが期待できるということです。「辞めたら収入が下がる」というイメージがあるかもしれませんが、実際にはそうとは限りません。
転職先別の詳細
IT業界(SaaS営業・カスタマーサクセス)
最も人気の転職先で、年収アップも期待できます。
「IT業界なんて未経験だし、無理でしょ?」と思うかもしれません。でも実は、IT業界では不動産営業経験者を積極的に採用しています。
なぜなら、不動産営業で培った「高額商品を売る力」「粘り強さ」「目標達成へのコミットメント」は、IT業界でも高く評価されるからです。IT知識は入社後に学べますが、営業スキルは簡単には身につきません。だから、営業力のある不動産経験者は重宝されるのです。
IT業界に転職すると、年収は平均で70万円アップ。さらに土日休み、リモートワーク可能など、働き方も大きく改善します。論理的な提案が得意な人、新しいことを学ぶのが好きな人には、特におすすめの転職先です。
人材業界(キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザー)
「人の話を聞くのが好き」「誰かの役に立ちたい」という人におすすめなのが人材業界です。
不動産営業で培ったヒアリング力は、キャリアアドバイザーの仕事でそのまま活かせます。お客様の希望を聞き出し、最適な提案をするという点では、不動産営業と共通点が多いからです。
人材業界は土日休みの会社が多く、ワークライフバランスも改善しやすいです。「人の人生の転機に関われる」というやりがいも大きな魅力です。
同業他社への転職
「不動産営業自体は好きだけど、今の会社がきつい」という人は、同業他社への転職も選択肢です。
同じ仕事でも、会社によって条件は大きく異なります。基本給、歩合率、労働時間、扱う物件の単価...。転職することで、年収が30〜80万円アップするケースも珍しくありません。「同じ仕事でこんなに違うのか」と驚く人も多いです。
辞める前にやるべき7つの準備
「辞めたい」と思ったとき、勢いで退職届を出すのは危険です。準備不足で辞めると、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
ここでは、転職を成功させるために必要な7つの準備を紹介します。全部完璧にする必要はありませんが、少なくとも「スキルの棚卸し」「貯金の確認」「転職エージェントへの相談」の3つは必ず行ってください。
準備1:スキルの棚卸し
これが最も重要です。 転職活動の成否は、自分のスキルをどれだけ言語化できるかで決まります。
「不動産営業を4年やりました」だけでは、面接官には何も伝わりません。「どんなスキルを身につけたのか」「どんな成果を出したのか」を具体的に説明できる必要があります。
例えば、こんな風に整理してみてください。
| カテゴリ | スキル | 具体的なエピソード例 |
|---|---|---|
| 営業力 | 新規開拓力 | 月○件の飛び込みで○件の契約獲得 |
| 営業力 | 提案力 | 顧客の潜在ニーズを引き出し、予算外物件を成約 |
| 営業力 | クロージング力 | 契約率○%を達成 |
| 交渉力 | 価格交渉 | 売主・買主双方の条件調整で成約に導いた経験 |
| 対人力 | ヒアリング力 | 顧客の本音を引き出すインタビュー力 |
| 対人力 | 信頼構築力 | リピート・紹介による成約実績 |
「数字」を入れることがポイントです。「たくさん契約を取った」ではなく「年間24件の契約を取った」と言えると、説得力が全く違います。
準備2:転職市場の調査
「自分のスキルって、市場でどのくらい価値があるんだろう?」
これを知らないまま転職活動を始めると、相場よりも低い年収で転職してしまったり、そもそも求人がない業界を目指してしまったりします。
まずは転職サイトで「不動産営業経験者歓迎」の求人を検索してみてください。どんな業界で求められているか、年収相場はどのくらいか、必要なスキルは何かがわかります。
スカウトサービスに登録して、どんなオファーが来るか試してみるのもおすすめです。「意外と需要があるんだな」と自信がつくかもしれません。
準備3:貯金の確認
転職活動には、思ったより時間がかかります。在職中に転職先を決められればベストですが、退職後に活動することになった場合、収入が途絶えます。
最低でも生活費3ヶ月分の貯金は確保しておきましょう。余裕を持つなら6ヶ月分あると安心です。
| 状況 | 最低必要額 | 推奨額 |
|---|---|---|
| 在職中に転職 | 生活費1ヶ月分 | 生活費3ヶ月分 |
| 退職後に転職 | 生活費3ヶ月分 | 生活費6ヶ月分 |
| 未経験業界へ転職 | 生活費3ヶ月分 | 生活費6ヶ月分 |
「貯金がないから転職できない」という人もいますが、在職中に転職活動をすれば貯金は最低限で済みます。収入を確保しながら活動できるので、精神的にも楽です。
準備4:退職のタイミング検討
退職のタイミングによって、もらえるお金が変わります。損をしないために、計画的に動きましょう。
ベストなタイミングは、ボーナス支給後です。 多くの会社では「支給日に在籍していること」が条件になっているので、支給日の翌日以降に退職届を出すのが賢明です。
また、繁忙期(1〜3月)を避けると、円満退職しやすくなります。会社側も余裕があるので、引き継ぎもスムーズに進みます。
準備5:転職エージェントへの相談
一人で悩まず、転職のプロに相談してください。これは本当に大事です。
転職エージェントを使うメリットは、
「エージェントって、なんか営業されそうで怖い」と思うかもしれません。確かに、強引なエージェントもいます。でも、複数のエージェントに登録して比較すれば、自分に合ったエージェントを見つけられます。
準備6:退職交渉の想定
上司に退職を伝えるのは、緊張しますよね。でも、事前にシミュレーションしておけば、落ち着いて対応できます。
退職希望日の1.5〜2ヶ月前に伝えるのがマナーです。引き止められることも想定して、「それでも辞めます」と言える覚悟を持っておきましょう。感情的にならず、冷静に、でも毅然と伝えることが大切です。
準備7:健康保険・年金の手続き確認
退職後の手続きも、事前に確認しておくと安心です。健康保険は任意継続か国民健康保険か選べます。年金は国民年金への切り替えが必要です。失業保険の受給条件も確認しておきましょう。
これらの手続きは、退職後でも間に合いますが、知っておくと心の余裕が違います。
【体験談】不動産営業を辞めた人のリアルな声
「転職して本当に良かったのか?」
これが一番気になるところだと思います。そこで、実際に不動産営業を辞めた方3名に、詳しい話を聞きました。
体験談1:IT業界へ転職(28歳男性・売買仲介4年)
T.Sさんは、売買仲介営業として4年間働いていました。成績は悪くなかったのですが、土日出勤と収入の不安定さに限界を感じて転職を決意したそうです。
「彼女との時間が全く取れなくて、このままでは結婚もできないと思いました。月末のノルマ追い込みで胃が痛くなる生活から抜け出したかった」
転職活動は3ヶ月。IT業界のSaaS営業に転職し、年収は520万円から620万円に100万円アップ。土日休みになり、彼女との時間も取れるようになりました。
「最初はIT知識がなくて不安でしたが、不動産営業で鍛えた粘り強さと数字へのコミットメントが評価されました。今は精神的に本当に楽です」
体験談2:人材業界へ転職(32歳女性・賃貸営業6年)
M.Kさんは、賃貸営業として6年間働いていました。仕事自体は好きでしたが、結婚を機にワークライフバランスを重視して転職を決意。
「子どもができたら今の働き方は絶対に無理だと思いました。土日出勤、夜遅くまでの対応...。将来を考えたとき、このままではダメだと」
人材業界のキャリアアドバイザーに転職。年収は少し下がりましたが、土日休み、残業も少なくなり、生活が一変したそうです。
「お客様の話を聞いて最適な提案をするという点では、不動産営業と共通点が多いんです。だからスムーズに適応できました。何より、人の人生の転機に関われるやりがいがあります」
体験談3:同業他社へ転職(35歳男性・投資用不動産5年)
K.Tさんは、投資用不動産営業として5年間働いていました。成績はトップクラスでしたが、会社の歩合率に不満があり転職を決意。
「頑張って成果を出しても、会社に持っていかれる割合が大きすぎた。同じ仕事をするなら、もっと還元してくれる会社で働きたいと思いました」
同業他社に転職した結果、歩合率が5%アップ。年間で150万円以上収入が増えました。
「同じ仕事でも会社によってこんなに違うのかと驚きました。もっと早く転職すればよかった。不動産営業を辞めたいというより、今の会社を辞めたいだけなら、同業他社への転職もありですよ」
辞める?続ける?判断のためのチェックリスト
最後に、辞めるべきか続けるべきかを判断するためのチェックリストを用意しました。
今すぐ辞めることを検討すべき状況
- [ ] 心身の健康を損なっている(不眠、食欲不振、うつ症状など)
- [ ] パワハラ・セクハラを受けている
- [ ] 違法行為を強要されている
- [ ] 給与の未払いがある
上記に該当する場合は、準備が整っていなくても退職を優先してください。
転職を前向きに検討すべき状況
- [ ] 3年以上同じ悩みを抱えている
- [ ] 会社や上司に改善を求めても変わらない
- [ ] 業界自体に将来性を感じない
- [ ] 他にやりたいことが明確にある
- [ ] 家族の理解が得られている
もう少し続けてみても良い状況
- [ ] 入社1年未満で、まだ仕事を覚えきれていない
- [ ] 一時的なスランプの可能性がある
- [ ] 異動や担当変更で解決する可能性がある
- [ ] 転職先のビジョンが明確でない
まとめ:辞めたい気持ちは次のステップへの第一歩
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
最後にお伝えしたいのは、「辞めたい」と思うことは、決して後ろ向きなことではないということです。
むしろ、自分のキャリアを真剣に考えている証拠です。「このままでいいのか」と疑問を持てる人は、きっと次のステップでも活躍できます。
この記事でお伝えしたポイントを、もう一度整理します。
ただし、勢いで辞めるのは危険です。しっかり準備をして、納得のいく転職を実現してください。
もし「何から始めればいいかわからない」という方は、まず転職エージェントに相談してみることをおすすめします。自分の市場価値がわかると、不安が和らぎます。
あなたの次のステップが、より良いものになることを願っています。